Your friend
Hold me

バブルバスの甘い匂いが、江利子の髪から漂ってきた。
インテリア代わりに壁に下げられていたアヒルの形をしていたもの。
江利子の部屋は私の部屋のように無機質ではなくて、変だった。
普通の部屋なんだけれど・・・変な形相の仮面が置いてあったりとかしてー・・・
あれ。
何で私は江利子の部屋の批評なんてしてるんだろうか。
まともに、脳の方に血がいっていないからかもしれない。
絞められた部分だけ妙に現実的で、それでいて夢のような、どくどくと脈を打つ
音が否応無しに耳に入った。
そんなに強くは無かったから、声は出せたけれど。
「・・・え、こ痛い・・・」
ヘアバンドをつけていなかったから、風呂上りの少し湿った髪が、私の頬に
触れていた。
江利子はもう少しだけ手を緩めると、笑った。
でも私はその顔を見てですら、恐怖とかそういったものの類は全く
心に浮かんではこなかったのだから、不思議だった、としか言いようがない。
江利子のいつもの無関心さを百倍もしたような、冷たい表情。
「痛くしてるんだから、当然じゃない」
手を緩めたかと思えば、また強く締められた。
咽る事も出来ずに、目じりに溜まった液体が床に落ちて行くのだけが見えた。
感情によるものではなくて、ただ痛かっただけ。
全く。
死ぬかもしれないっていうのになんて緊張感のない。
江利子は私を殺さない、なんて高をくくっていた訳じゃない。
殺すと言ったら殺す、そんな人だと知っていた。
でも私は、今現在自分の首を絞めて笑っている人を見ても、どうしても
恐怖が湧いてこなかった。
ああ死ぬのかな、ただ、それだけ。
江利子に殺されるなら別にいいかな、なんて。
それでも一つ後悔する事があれば、もう少し江利子のことを知りたかった事ぐらい。
ああそうだ。聖にもう少ししっかりしなさいよって言って、祐巳ちゃんの恐竜の
鳴き声を聞いて、それから祥子に誕生日おめでとうって、それからー・・・
首を絞める手が唐突に緩められて、私は息をついた。
みっともなくむせてしまう。
江利子の頭が私の頭の横に下りてきて、床にこつんと当たって止まった。
さっきまで私の首を絞めていた手は、そっと私の肩に置かれているだけだった。
「あなたの考えている事が嫌にはっきりと分かるわ・・・・・・」
江利子の第一声は謝罪ではなかった。
なんというか、感想。
まだ喉が痛んだから、私はもう一度咳をしてから口を開いた。
「・・・じゃあ今私が何考えてるか分かる・・・?」
「・・・何も考えてないでしょ」
江利子がいつもの江利子のように溜息を付いて言うものだから
私は笑い出してしまった。
それこそさっきの江利子よりも頭がおかしくなったように。
「その通り。私は今何も考えてない。・・・黄薔薇さま、首絞めごっこは
もうお済?」
わざと江利子の気に障るように言ったけれど、江利子は反応せずに
私の目を覗き込んだ。
さっきとは違って、どこか哀しい目。
「あなたって昔から人の扱い方が上手ね・・・罵倒するか頬を殴るかしなさいよ
ねえ、蓉子、ねえ」
江利子の手が私の肩を激しく揺さぶっても
その目から落ちた涙が私の顔に落ちても
どうしてか私は江利子にそんな事をしようという気が起きなかった。
ただ髪に指を通して、髪に顔をうずめて甘い匂いをかいだ。
江利子の肩が一瞬だけ小さく震えたかと思うと、
顔が近づいてきて私の頬にキスをした。
触れるたびに胸に小さな痛みが走る。
瞼、頬、首、耳。
くすぐったいと言って身をよじると、江利子は唇にそっと触れてから顔を上げた。
「好きよ、蓉子」
世界中の誰よりも、なんて言えないけれどと一言多く言ってから、
江利子はもう一度私を抱き締めた。
私の服には江利子の匂いが染み付いていて、洗濯しても落ちそうになかった。
あとがき
よっす!オラ恥ずい。
わけわかめ。
ただ首を絞めたかっただけかもしれませんね。馬鹿です。
好きだから永遠に自分のものでいて欲しいと言う願いですよ。
どうしよう・・・凸大好きなんですが。
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