「つまらないわ」
私が薔薇の館に入って早々、江利子が言った言葉。
「何が・・・?」
江利子は少しだけ垂れていた髪をかき上げると口元を歪めた。
「全部よ」
また江利子の『例の病気』が発症したものだと思い、私はそれ以上
江利子に関わるのをやめていた。
アールグレイをゆっくりと出して、ロイヤルミルクティーにするための
準備をしていて、江利子が後ろから抱き付いてくるまでは。
「ちょっと、危ないからやめてよ」
「聞いたとおりだわ」
「は?」
江利子がもう一度腰に回した手を締める。
「蓉子ってちょうどいい柔らかさなのね」
「・・・聞いたって誰によ?」
「聖」
私は心臓が跳ね上がった。
江利子がそのことを知っていると知った途端に、私のおかしな
心臓はばくばくと音を立て始める。
「な、なにいってるのよ」
「何、って。蓉子の抱き心地についてでしょ」
江利子は調子に乗って胸の方にまで手を伸ばしてきた。
「ちょ・・・江利子ふざけないで!」
「ふざけてなんかないわ」
江利子は手を休めることなく私の胸を執拗に触り続けた。
「も、やめて・・・お願いだから」
「そうねー」
江利子は急に手を離して、降参のポーズのように手を上に挙げた。
「暇だったから。許して、ね?」
言う江利子はほんとに退屈そうで、
少し気の毒だったから許してあげた。
何百枚もある書類に目を通しながら、江利子が声を掛けてくる。
「蓉子も味わってみなさいよ、この怠惰な日常を」
「いいわね。縁側で眠る老猫?」
「それは志摩子が近いでしょ。・・・・とにかく」
江利子は言うけれど、私はそんな日常でもいいと思う。
みんながいて、自分もいて、暖かな日差しの中で眠る子猫のように。
「あなたがいると私が暇じゃない、って事は確かね」
私が顔を上げると目を合わせないつもりなのか、
江利子は書類に目を通していた。
「ありがとう」
私が言うと、江利子はおもむろに立ち上がって私の右頬にキスをした。
ほんの少しだけ心臓が音を立てて、
私はお礼に江利子の頭を撫でた。
理由は分からないけれど多分、
子猫の飼い主のような気分だったのかもしれない。
あとがき
よっす!オラ恥ずい。
長い物が書けなくなって来てますやばいですね。
次回は令祥子でほのぼのになる予定。
<< BACK || TOP || NEXT >>
よっす!オラ恥ずい。
長い物が書けなくなって来てますやばいですね。
次回は令祥子でほのぼのになる予定。
