Your friend
私が彼女に出会ったのは実はあれが初めてではなかった。

錯綜視線線路

何かを勘違いしたと思しき太陽が、私の頭を気安く遠慮なく叩く。
今が何月か分かっていて、その紫外線たっぷりの太陽光線を発射しているんだろうか。
・・・もし分かっていないのだったら雲ひとつない空にある太陽に向かって、
ストーーーーーップ!と叫びたいところだけど、そんなことをしたらただの
熱で頭がちょっとおかしくなった人としか見られなくて、独りぼっちの兎みたいに
さみしい思いをすることになるだろうからやめておく。
ああもうこんなくだらない事を考えている時点で私は既にアウトなのかもしれない。
・・・何が?
わざわざ光を吸収しやすいような色で作ってある制服にすら恨みを抱く。
夏服ぐらい白か何かにすればいいと思う。
それに一番うっとおしいのが背中に背負っている布切れに包まれた棒状のもの。
こんなものでしか私の存在意義を端的に表すことができないのだから
滑稽で酷く笑えるものでもある。
だから私は早く歩みを進めなければならない。
・・・何で?
乾いたアスファルトがざりりと音を立てて到着したと告げる。
暑くて視覚情報より聴覚情報のほうが頼りになる。
聴覚情報・・・だなんて言うのだろうか。多分言わない。
でもオヤシス・・・オアシスみたいな例もあるし人間なんて精密なようで
大雑把にできているのだ。
だから私がここをいつものところだと勘違いしているだけかもしれない。
うん。きっとそうだ。
だからさっき来た道を来たときの二倍の速度で抜け道通って直線距離で帰ろう。
・・・何のため?
そして扇風機のボタンを強にして声を上げながらアイスを食べよう。
うんいいね!それがいいよ・・・。

「菜々」

聞きなれた声にゆっくり振り返る。

「お祖父さま・・・」

・・・分かってる。現実逃避というものは結局逃避なのであって、そこに出口はないということは。
でも逃避がたとえ成功したとしてもそこに自分の居場所がないのは確か。

「・・・おはようございます」
わざと自分の学校の挨拶は使用しない。
自分の姉たちにうしろめたい、というのもあったかも知れない。
「早かったな・・・。もう皆来ているぞ」
遅刻してきた生徒に向かっておはようという担任みたいな口調で、
祖父は私に向かってそう言った。
だから私ははいとだけ返事を返すと、無駄にいかつい、いまさら流行遅れな門をくぐる。
一歩入ると独特の空気が体の奥にまで染み込んできて、思わず頬が緩みそうになるのを
私は堪える。
晴れているというのに整然と、それでいて自然に植わっている木の湿ったあたりに
蛙がいるらしくげこげことないていた。
今まで嫌がっていたというのに門をくぐった途端これだ。
だから人間の体は大雑把にできているってー・・・
「・・・は他の道場との交流も兼ねているからな。お前の学校の生徒もおるだろうよ」
聞いてなかった。
お祖父さまが嫌いだからとかそういうんじゃなくてただぼーっとしていただけで。
駄目だなあ今日本当に調子悪いみたいだ。
それでも他の道場から多くの人が来ている云々のところは聞き取れた。
しばらくの間、脳に血が通うまで、そうやってお祖父さまの白いふわふわの髭を眺めながら
こくこくと相槌を打つことにしよう。
という作戦はすぐに看破されお祖父さまは私をもふもふと叱った。
人の話を聞くときは常に集中していろと。
一理あるどころか当たり前のことだと思った。
だけど私は、道場につながっている廊下からいきなり背の高い誰かが飛び出してきて
目の前にくるまで気付くことができなかった。
「っ・・・」
「・・・おや、支倉の娘さんではないですか。どうされましたか、そんなに慌てて」
私は知らなくともお祖父さまは良く知っていた顔らしく冷静に対処していた。
・・・ホントニシラナイ?
逆光に透ける、生まれたときから色素が薄そうな短い髪に
きりりと上がった眉と意志の強そうな瞳。そして
だらしなく開け放たれている口元。
「す、すすすいません有馬師範が居るということに気付かず大変な失礼をっ・・・!」
「いや、それはいいんですが、急いでいたのでは?」
お爺ちゃんが鋭く指摘するとその人は金魚みたいにくちを開閉して
わけの分からない踊りのようなものを始めた。
本人はそれどころではないのだろうけど、見ている側としては滑稽で仕方ない。
「・・・私達は良いので、先に行かれてはいかがですか?」
私がさらりと提案すると、その人はやっと私を認識したようで、でもほっとした顔をして
ありがとうございますといって門のほうへ走っていった。

「何だったんでしょう」
「ああ。また乱暴な姫君を迎えにいっているんだろうよ」
お爺ちゃんの笑顔を久しぶりに見た気がしたので、私は興味を引かれて、
廊下のちょっと手前の木戸のちょうど陰になっているところで見ていることにした。
するとしばらくしてから、長い三つ編みの元気そうな人がぷりぷりしながら歩いていく後ろから
さっきのひとがおたおたと付いてきた。
心配するのが杞憂だと傍から見ても分かるのに、あの人は慌てている。
多分あの女の子もそれが嫌であんなにぷりぷりしてるのだと思う。
その気持ちなんとなく分かるなあと苦笑していると、
自分があえて遠まわしに表現していることに気付いた。
・・・気付いていたけど気にしないようにしていただけか。
あの人だとかあの女の子だとか。
支倉令と島津由乃とフルネームで憶えているくせに。
本当は『さま』を付けなければならないのだけれど、ここは許してもらおう。
私は二人が道場に入ったのを確認してから、後に続いてそろりそろりと入った。
当然ばれて制服を引き剥がすようにして速攻で着替えさせられたけれど、
空気が何億もの針になったような緊張感を味わうことができたので
もうどうでもよくなった。
今まで私が見た中で、あんな空気を纏える人はいなかった。
一瞬だけなのに、面越しに視線が交錯して、
私は倒れた。




『あなたの妹は、そのロザリオをもらえるんですか?』

・・・言ってしまった。
確かにあの人にもう少し近づきたいと思っていたのもあるけれど。
同じ目をしていたから。
同じ空気を纏っていたから。
だからあんな言葉で逃げてしまった。


ああ
春はまだか。
あとがき
よっす!オラ恥ずい。
お・・・おー・・お久しぶりDAY酢☆キャハ(撲殺)
暑くて剣道する気力がなかった菜々たんが二人に会って機嫌よくなりましたよ
というおはなしでしたははあ。・・・分かりにくい・・・。
呼び方が途中からお爺ちゃんになってるのは仕様です。
読みにくいことこの上ないですね・・・ごめんなさい。寝ます。
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